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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

「乱暴と待機」~もう一度観たくなるかっこわるさ

本谷有希子の作品は、まるで「かさぶた」のようだ。少なくとも私はそう思う。かさぶたって、痛くて血が出ることもわかっているのに、チリッとした痛みがいつのまにか病み付きになってしばらく経(た)つとまたカリカリ掻(か)いてしまう。

本谷有希子の舞台を観(み)ると、小説を読むと、できれば存在に気付かないままやり過ごしたい自分の中のみっともない部分を無理やり引きずり出されて心をチクチク刺されたのに、気付けばそれが快感になっていた……そんな感じなのだ。

その本谷有希子による戯曲・小説をもとにした映画『乱暴と待機』も、例に漏れず「かさぶた的」魅力を備えている。

“復讐(ふくしゅう)”を胸に毎夜、屋根裏から覗(のぞ)く男・英則(浅野忠信)と、兄でもない英則を"お兄ちゃん"と呼び覗かせている女・奈々瀬(美波)の暮らす市営住宅に、あずさ(小池栄子)と番上(山田孝之)夫妻が引っ越してきたことで、英則と奈々瀬の関係に微妙な変化が生まれていく……。

奈々瀬のことを「オドオドしてイラつく」と言いながら彼女を軟禁する英則と、“お兄ちゃん”が“復讐”を思いつくのを楽しみに待つ奈々瀬。傍目(はため)には奇妙に映るこの二人の関係性が、“人との繋(つな)がり”を切実に求めるからこそ生まれたものだと知った時、奈々瀬の呟(なげ)きがより一層の重みをともなって胸に響いてくる。

永遠の愛は疑ってしまうけど、永遠の憎しみなら信じられる――。

そして、自分の中に隠れている英則と奈々瀬の存在に気付かされるのだ。

「自分の失敗を他人のせいにして“復讐”しようとする英則の子供っぽさって、かっこわるい――でも、他人のせいにしたくなること、あるな」

「人に嫌われることを怯(おび)えている奈々瀬って、見苦しい――でも、私だって嫌われるのは嫌だな」

「この二人の歪んだ関係、気持ち悪い――でも、“壊れることのない関係性”をほしいっていうのはわかるな」

英則も奈々瀬もかっこわるい。だから、心がチクチクする。でも、同時にかわいらしくていじらしい。だから、快感になる。

そして、もう一度観たくなるのだ。今日もまた、かさぶたを掻いてしまうように。

(「乱暴と待機」宣伝担当)

Photo

配給:メディアファクトリー、ショウゲート

10月9日(土)よりテアトル新宿ほかにて全国ロードショー

(C)2010『乱暴と待機』製作委員会

<PG12>

2010年10月06日
乱暴と待機
映画配給および宣伝各社の担当
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