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映画散歩

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肝臓に見とれてしまう「孤高のメス」

 医療を扱った映画やテレビ番組が量産されています。けれど、手術シーンのリアリズムをここまで追及した作品はなかったのではないでしょうか。今から20年前の生体肝移植の現場を描いた映画「孤高のメス」、出色の出来でした。

 1989年。ピッツバーグで肝臓移植を学んできた外科医・当麻(堤真一)が、地方都市の市民病院に赴任してきます。古くから在籍していた外科医・野本(生瀬勝久)らにとって、それまでなら大学病院に依頼していたようなハイリスクの手術に挑んでいく当麻は、鼻つまみ者でした。オペ担当の看護士・浪子(夏川結衣)は、当麻の情熱にうたれ、少しでも当麻のオペがうまく進むよう、密かに勉強を重ねます。
 1年前のいい加減な手術が原因で患者が亡くなるという事態の最中、市民病院の充実に尽力する市長・大川(柄本明)末期の肝硬変で運ばれてきます。大川を救う方法は、生体肝移植しかありませんが、生体肝移植は世界でも前例のない大手術。家族たちに手術のリスクを説明していると、浪子の隣の家に住む小学校教師・静(余貴美子)の息子が、交通事故で運ばれてきました。数日後に脳死と判定された息子の臓器を提供したいと申し出る静。しかし、89年の段階では、日本で脳死肝移植は認められていません。
 目の前で苦しむ大川に、当麻たちは一体なにができるのだろうか……。

 手術シーンでは、肝臓などの臓器が大写しになります。それらを、切ったり、取ったり、血管を糸結びしたり……手術の工程を丹念に見せてくれるので、お医者様向けの研修ビデオのようではありますが、人間の臓器とはこんなに美しいものかと見とれてしまいます。全くもって、グロテスクではないのです。移植した肝臓に血が再び流れるシーンなど、いとおしさを感じるほど。あのシーンの支えた(臓器の小道具を作った?)美術スタッフはお見事です。

 主演の堤真一さんの役作りも素晴らしく、愚直で情熱的な当麻が本当に魅力でした。病院の食堂でご飯を食べているだけのシーンでさえ、素敵(すてき)にうつる。ボサボサというわけではないけれど伸びっぱなしの髪形が、忙しい医師の日常をうまく表現していました。

 シングルマザー浪子が当麻に抱く感情も、一人息子を失った静の選んだ道も、すべてが孤高監督の成島出さんは、前作「クライマーズ・ハイ」でも、仕事に生きる者たちの魂の美しさを描いてくれましたが、今回も見終わったあと、自分の仕事をきちんと頑張ろうと思わせてくれる内容。是非フレッシャーズの方にも見ていただきたい作品です。

 さてさて、長らくお読みいただきましたワタクシの映画ブログも、今回が最終回となってしまいました。若干偏った作品選びではありましたが(笑)。お読み下さりありがとうございました。またどこかかでお会いできたらうれしいです! それでは皆様、素敵な映画ライフを!

2010年03月30日
乾貴美子
孤高のメス
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