朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

エンタメ

  • 映画散歩TOPへ

映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

透明な不倫?「スイートリトルライズ」

 「恋をしているの。本当は夫だけを愛していたいのに。」

 なんて美しいセリフだろう。懺悔(ざんげ)のようで、それでいて誇らしげなこの一行を中谷美紀さんが口にすると、映画で描かれているのは夫婦愛でも不倫でもなく、崇高なアガペーのような感じがします。

 テディべア作家の瑠璃子(中谷美紀)と、IT企業に勤める聡(大森南朋)は結婚して数年。子どもはいません。毎朝、瑠璃子は聡より先に起きて、アンティークの壁時計のネジをゆっくりと巻き、「フゥッ」と大事そうに吹きかけた息で窓のふき掃除をし、サイホンでコーヒーを入れてから朝食の支度をします。毎朝同じ順番で、同じことを繰り返します。夫の帰りは玄関で出迎え、ささいなことも妻から報告する。2人は理想的な夫婦のように見えました。聡がカギをかけた自室にこもってTVゲームに夢中になっていたとしても、瑠璃子はそれを自然なことのようにとらえていました。

 ある日、瑠璃子が開いたテディベアの個展に、非売品のベアを売って欲しいという青年・春夫(小林十市)が現れます。ベアは彼女(安藤サクラ)にプレゼントしたという春夫と瑠璃子は、ほどなくして肉体関係を持つようになります。
 一方、聡は後輩のしほ(池脇千鶴)から積極的にアプローチを受け、「2人で伊豆に行きたい」と言われます。伊豆へは瑠璃子も同行しますが、聡としほがダイビングしている間に、瑠璃子は追いかけて来た春夫と逢瀬(おうせ)を重ねるのでした。時を同じくして、聡としほもまた、体を重ねているのでした。

 いわゆるW不倫のお話です。けれど、シンプルで、ゆっくりなセリフまわしのせいか、清い愛を綴(つづ)った詩の朗読のような雰囲気です。画面はいつも淡い色合いで、余分な動きがなく写真集を眺めているよう。ドロドロした話のはずなのに、けがれを感じないのは、ひとえに瑠璃子を演じた中谷美紀さんの透明感のせいでしょう。

 とにかく中谷美紀さんの美しさを満喫できる作品。朝起きて、時計のネジをしめて、窓ふきをする。そんな些細(ささい)な動きすら美しく、芸術作品のよう。映画を観(み)終わった後の第一声は、誰もが「中谷美紀ってキレイだね~」になってしまうのではないでしょうか。

 もしくは、「中谷美紀って出し惜しみし過ぎだよ!」になってしまう可能性もあります。情事がテーマの映画にもかかわらず、中谷美紀さんの首から下の肌の露出は一切なし。色事の後だということは、顔面のアップだけで表現しています(ま、その表情が絶品でしたけどね)。首から下を映してはいけない事情がなにかあったのでしょうか。共演者は、池脇千鶴さん、大森南朋さん……と濡れ場OKな役者陣であるにもかかわらず(小林十市さんだって、元バレリーナで体自慢なんだから濡れ場OKなはずだ!)、首下NGの中谷さんにバランスを取ったのか、エロチックなシーンはほとんどなし。

 エロスを期待して見に行くと、帰り道でトボトボしてしまうかも知れません。

2010年02月01日
スイートリトルライズ
乾貴美子
トラックバック (0)
  • バックナンバー

ライター紹介

ココログ

画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Firefox 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。