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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

女優の情愛を描く「抱擁のかけら」

 パンフレットを何度も何度も眺めてみてしまう。美しい、美しい映画。出てくる女優も、風景も、衣装も、そこに描かれる心情も、すべてが美しい。

 「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥー・ハー」「ボルベール<帰郷>」などで知られるペドロ・アルモドバル監督の新作です。タイトルの「抱擁のかけら」とは、寄り添う恋人たちの写真をバラバラに切り裂く象徴的なシーンからとったもの。

 病気の父親を抱えるレナペネロペ・クルス)は、大富豪の実業家エルネストホセ・ルイス・ゴメス)の愛人をしていました。やがて父が亡くなり、愛人生活に退屈を感じ始めたレナは、昔からの夢だった女優をこころざすことにします。新作映画の撮影準備をしているマテオルイス・オマール)にオーディションを申し込み、なんと主役に抜擢(ばってき)されますが、レナを執拗(しつよう)に束縛するエルネストはよい顔をしません。息子のエルネストJr.(ルーベン・オカンディアノ)にメーキング映像を撮らせるという名目で現場に送り込み、レナの監視をします。しかし、エルネストJr. がまわすカメラには、レナとマテオが恋に落ちるまでが克明に記録されてしまうのでした……。

 <大富豪の愛人が女優を目指す><女優と監督の恋>……わりとよくあるテーマのような気がします。けれどこの映画を特別なものにしているのは、“誰よりも女優の役が似合う女優“ペネロペ・クルスの存在感でしょう。非の打ちどころのない美貌で、美しすぎる女性レナという役どころに説得力を持たせます。

 そして、エルネストとエルネストJr.の異様、というか、変態的な視線が物語に奥行きを与えています。

 エルネストは息子が撮影したメーキング映像を夜な夜なチェックする。音声は録音されていないので、口跡を読み取れる人を雇い、同時通訳のごとく映像に合わせてしゃべらせます。スクリーンの中で、愛するものが言い放つ残酷な言葉を聞かされる時のエルネストの表情が実に見事。富も権力も手にした男が、プライドをズタズタにされる瞬間とは、こんなに哀れで、愛らしいものなのだろうか。

エルネストJr.はホモセクシュアルで、父を憎んでいるという設定。撮影現場で、カツラや“痙攣(けいれん)”に必要以上に反応したりといったキャラクター設定は、細部まで見逃せません。きっとエルネストJr.もマテオを愛していたのではないか……と考えると、人間関係はますます複雑で、人間って業深くって面白いなぁと思います。

ところで、ペネロペ・クルスのプロフィールを見てびっくり。身長は166センチですって。もっともっと大きい女優さんなのかと思っていたのに。スクリーンで実際より大きく見えるのは、大物の証しですね。

2009年12月21日
乾貴美子
抱擁のかけら
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