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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

うっかりメタル好きになってしまった「アンヴィル」

私は音楽にうとく、このバンドのことを知らなかったのですが、メタル好きな方ならきっとご存じなのでしょう。アンヴィル、という、20年以上前に出したアルバムが(そこそこ)ヒットしたバンドのドキュメンタリー映画を見ました。

彼らは芸歴30年。「パワーメタルの父」「スラッシュ・メタルのゴットファーザー」などと呼ばれている存在で、「彼らに影響を受けた多くのバンド(メタリカとか?)が栄光を手にしている」そう。

しかし、アンヴィルは音楽だけで生計が成り立つ状態ではなく、ボーカルのリップスは給食を宅配する仕事で食いつないでいます。ドラムのロブは建築現場で働きつつ、「こんな仕事はしたくないよ。早くライブがしたい」と嘆く日々。
 
ある日、ツアーをブッキングしたと女性マネジャーから連絡があり、ヨーロッパ・ツアーに出ます。けれど電車に乗り遅れたり、ギャラを支払ってもらえなかったり、悪夢としか思えないような有り様。そんなツアー中のトラブルのディティールが最高に面白い!
 
 
ライブハウスに向かう途中で道に迷って、電話のやりとりで現地に向かおうとするのだが、いかんせん異国の住所は英語ではないため読むことが出来ません。スペルを分解して相手に伝えるのだが「H、ホテルのh。A、アスのA。S、ソドムのS・・・」なんて具合に、例としてあげる単語がなんともメタル調で、話している本人はいたって真剣なだけに爆笑です。
 
遅刻を理由にライブのギャラが支払われなかった時には、したり顔の弁護士が出てきてこう言います。「ギャラが支払われないなんて、マネジャーがよくないんじゃないか? どうして売れないのか、もっとよく考えた方がいい!」。ボーカルのリップスは困った顔で答えます。「それを20年間考えているんだよ…」

随所に哀愁と笑いがちりばめられ、売れないロックミュージシャンの苦労節がエンターテインメントに仕上がっています。

ボーカルのリップス実直な男性。レコーデイング代を捻出(ねんしゅつ)するためテレホンショッピングの仕事を始めるものの、ステージでは派手なパフォーマンスで観客を挑発しているのに、いざ仕事となると強引な勧誘が全然できません。
 
リップスは語る。
「バンドのメンバーは、みんな金がない。だけどみんなアンヴィルを信じている。すごいだろ!」

初期衝動が、30年間も続いているんですね。すごい業の深さです。

「俺(おれ)は15で音楽をはじめて50になった。ロックスターになるなんて、バカな夢だけどかなえてやる!」

50過ぎて、この言葉はなかなか言えません。50過ぎて言えるからこそ、観(み)るものの胸に突き刺さります。

ドラムのロブは、地味に変な人。「絵を描くのが好きだ」と言うが、自信作だと言って出してきた絵がトイレ(と、その中に放出された大便)だった時には、これまたメタルやり続けずにはいられない業の深さを感じ、笑いを通り越して感動してしまいました。

観客として、思春期の多感な年頃に、変なバンドとか変な芸術に出会って興奮するのは簡単です。こちらの感性もまっさらですからね。けれど、大人になってしまうと、変なものに対する免疫がついて、変人を見ても何も感じなくなります。でも、でも、大人になってからでも、自分よりもっと大人なはずの変な人に出会えることってあるんですね。久しぶりに「変」に対してのトキメキを感じました。

※10月24日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開

公式ホームページ

2009年09月24日
アンヴィル
乾貴美子
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