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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

未来の食卓 ~オリーブが見守る村

映画のチラシには見覚えのある風景があった。自然豊かなというよりは、荒っぽい自然のままの川の景色を横切って、古くて大きな橋が架かっている。南仏ポン・デュ・ガール。古代ローマ時代、紀元前19年頃に作られたといわれる水道橋は、13年前に訪れた場所だ。かまぼこを切ったような穴がぽこぽこ空いた橋は石造りで、おおらかに健在の様子だ。

水道橋のあるこの村は、ゴッホのひまわりで有名なアルルに近いバルジャック村。村長のショーレさんをはじめとして、この村では小学校の給食を全部オーガニックにすることに挑戦し始めた。村の外観は美しいけれど、実は土や水は汚染されていて、住む人々が苦しんでいる。このギャップを撮りたいと、ジャン=ポール・ジョー監督は、この村の取り組みを1年かけて追った。

ふだん、「オーガニックにこだわっています」なんていうと、セレブ気取りとか、いきすぎた健康志向ように見られることもある。けれど、私は物心ついたころには母が食事の一部に採り入れていたため、わりと自然に受け入れてきた。ただ、一人暮らしの今、どこまで採り入れたらいいのか戸惑うこともある。この映画にはそのヒントもあるかもしれないと、とても興味があった。

バルジャック村の小学生は、「食べる」に加え、「育てる」ことに取り組んだ。オーガニックに触れていくにつれ、大きく変わっていく子供たちの様子を見て、まわりの大人たちも興味を持つようになる。オーガニック食材を扱うようになった店や、それらを買い求める親たち。子供たちによって「自分の身体を作るのは食べ物」だという、忘れてしまいがちなことにあらためて気付かされてゆく。

食べ物を供給する側の姿も語られる。農薬を使っている人と使っていない人の隣り合ったブドウ畑。ブドウの木以外、虫もいなければ草も生えない畑と、雑草がのびのび生えている畑。一本の境界線を隔てて、様相がまったく異なる。同じものを作っているとは思えないほどの違いは一目瞭然だ。農薬を使っている人やその家族の体に起こる異変も紹介されている。
とはいえ責めてはいない、脅すわけでもない。強要もしない。見ていると自然とわかる。何が自然で何が不自然か。その両者がそれぞれ何をもたらすのか。きちんと考えて変えていかなければと思う気持ちが強くなる。見進めていくうちに「オーガニックにこだわることは決してやりすぎではない」と感じた。

13年前の写真を引っ張り出してみると、大きな木の下で撮ったものがあった。そうそう、水道橋のまわりには、見守るようにオリーブの木が点在していた。細い何本もが絡み合って太くなった幹を持つその木は、樹齢100年以上だとおしえてもらった。あの木は、いつまで歳を重ねられるだろうか。もう百年。もう千年。あの橋とともに少しでも長く見守っていてほしいと思う。

(どらく編集部・映画担当K)

シネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほか全国順次公開

「未来の食卓」公式サイト

2009年08月09日
どらく編集部映画担当
未来の食卓
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