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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

81歳の逃走劇 ~人生に乾杯!

「マルタの次は、エミルです!」
映画の配給・宣伝会社のFさんからの電話だ。
エミル……。誰でしょう?エミルって。
Fさんは熱弁をふるう。
「私は個人的におじいちゃんの方が好き。かわいいんですよ、このハンガリーのおじいちゃん。私はマルタより、この作品!」
「おじいちゃん」という存在がどうも苦手な私は、かわいい「おじいちゃん」なんて現実味がないなと思っていた。でも、80歳のマルタのように花柄のワンピースが似合うかわいいおばあさんも出てくるという。何だかおばあさんつながりで興味がわいてきた。

人口1千万人足らず、ドナウをたたえる東欧の小さな国の物語だ。81歳のエミルと、70歳のヘディ。主人公の老夫婦はスクリーンに登場するなり、つっけんどんな会話を交わしていく。50年前、運命的な出会いで結ばれたはずなのに見る影もない。色にたとえるなら、日に焼けて色褪(あ)せた本の色。歳月の経過につれ、かつての真白さを彼方(かなた)に置いてきてしまった黄ばんだ紙の色だ。互いを思いやる余裕もなくなってきたふたりには、金銭的な余裕もない。
ただ、それは、夢を見させてくれる「映画」の醍醐味、プロローグにすぎないのだ。
家にやってきた借金の取立屋に、ヘディは自らの誇りだと一番大切にしていたダイヤのイヤリングを、耳から外してあっさりと渡してしまう。取立屋が奪おうとしたおじいさんの蔵書を守るために。「しまった」と思ったエミルおじいさん、イヤリングを奪い返すために銀行強盗に早代わり。突拍子もないことを思いつく。ギックリ腰なのに。そして、偶然手に入れていたピストルを握り、中古(ちゅうぶる)車に乗り込んで、次々と強盗に押し入ってゆく。
警察の手引きで再会するふたりだが、ここからさらにギアチェンジ、トップスピードで逃走劇へと展開。ヘディの耳には、ふたたび誇りと輝きが戻ったイヤリング。
よろよろしている割には、なんだかんだとトントン拍子に事が運ばれていくリズムが心地いい。老夫婦の物語だからと侮ってはいけなかった。
そして――ラストにやられた。言いたいけれど言えないもどかしさは、ハンガリーのダンス、チャールダーシュでも踊ってごまかそう。

☆6/20よりシネスイッチほかにて全国順次公開

(どらく編集部・映画担当K)

2009年06月18日
どらく編集部映画担当
人生に乾杯!
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