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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

エンドロールまで見逃せない「劔岳 点の記」

先日、私は屋久島で縄文杉を見てきました。標高1280メートルの場所にある縄文杉を目指して、登山すること往復13時間!(撮影しながらだったので13時間かかりましたが、普通なら10時間くらいです) 這(は)うようにして歩く険しい道もありましたが、この映画を観(み)た者としては、そんなこと位でくじけてはいられません。たとえ登山でなくとも、ピンチを乗り越えるための勇気を与えてくれるのが「劔岳 点の記」。

いまから100年以上前、地図を作るために、誰も登ったことのない険しい山“劔岳”を目指した男たちの物語。「映画」というより「記録」という言葉が似合うような、壮絶な映像の連続でした。

家族と離れ、命懸けで山に登る男たちの人間ドラマが描かれていることはもちろんなのですが、どうしてもまず最初に感じてしまうのは<撮影現場はさぞかし大変だったろうに>ということ。

趣味でトレッキングするだけでも大変な劔岳なのに、撮影機材や、衣装や、スタッフキャスト用の食料を背負い、岩山を登り、撮影現場で荷ほどきをして、照明とカメラと音声をセッティングして、ワンカット撮影したらまた荷物をまとめて山を登る……。屋久島レベルでも機材の出し入れが大変だったので、劔岳撮影隊の苦労がしのばれます。

水平な場所などない山で、どうやってカメラをセッティングしたのだろう? 遠くで待機している役者に、どうやって演技スタートのタイミングを知らせたのだろう? 湧(わ)き上がるたくさんの疑問に「気合で」と答えられそうなくらい、嘘(うそ)やまやかしが感じられない本気の映画。
 
スタジオでなら楽々こなせてしまう作業も、ウン十万、ウン百万の撮影機材を崖(がけ)から落としたらどうしよう……というプレッシャーの中で撮影されているので、すべてのシーンに緊張感が走っています。

監督は、「隠し砦の三悪人」「用心棒」「椿三十郎」「どですかでん」などで黒澤明監督作品にカメラマンとして参加し、「八甲田山」「鉄道員(ぽっぽや)」「極道の妻たち」シリーズなど数多くの作品に携わっている木村大作さん。名カメラマンとして日本映画の歴史に名を刻む木村さんの監督デビューです。
 
役者陣は、浅野忠信さん、香川照之さん、松田龍平さん、仲村トオルさんにモロ師岡さん……と、マッチョな印象のない顔ぶれなところがよい。アーノルド・シュワルツネッガーが山に登っても誰も驚かないが、草食系の役もこなせる俳優をキャスティングするあたりにも監督のセンスが光る。

映画に関係したすべての人物の名前が紹介されるエンドロールには、肩書が一切登場しない。スタッフもキャストも分け隔てなく、“あるひとつの言葉”で紹介される。素敵(すてき)な言葉だった。その言葉に込められた思いこそ、映画のテーマであり、長年日本映画を作ってきた木村監督が、ご自身のお仕事の歴史を総括した言葉のような気がします。

★6月20日全国ロードショー

2009年05月29日
乾貴美子
劔岳 点の記
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