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映画散歩

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北欧のおじさん、ホルテンさん ~ホルテンさんのはじめての冒険

5年前、北欧へひとり旅に出たとき、スウェーデン人のおじさんに出会った。美術館に連れていってくれたり、キーホルダーを思い出にと買ってくれたり、ホテルを予約してくれたりと、異様なほど親切だった。

昨年春、ヨーロッパへ旅行する際、久しぶりにおじさんに連絡してみた。定年退職したことも手伝ってか、「ぜひ遊びに来い」と熱心に誘ってくれるので、おじさんの住むスウェーデンのイエーテボリまで足を伸ばした。5年ぶりでも相変わらずの人の良さ。朝から晩までの市内観光フルコースに加え、真夜中に300キロを超える長距離を飛ばして空港まで送ってくれた。たびたびお礼を言っても、「いいんだ、いいんだ」と照れるだけ。

「ホルテンさんのはじめての冒険」の主人公、オッド・ホルテンは、きまじめで、派手なものごとが大の苦手といった素朴な独り者のおじさん。ノルウェーの首都オスロで鉄道の運転士をして40年の67歳は、今週末で定年を迎える。
退職前夜の送別会も、翌朝に備えて早めに帰ろうとするけれど、同僚のアパートでの2次会に誘われてしまう。そろそろ帰ろうとすると、建物の玄関が閉められていて開かない。脱出をはかろうと忍び込んだ先は子ども部屋。寝つけず寝たふりをしていた子どもに、遊び相手が来たと喜ばれ、引き留められた結果、朝まで眠りこけてしまう。もちろん、最後に運転する予定だった列車には間に合わない……。
こんな失態、人生で初めてなのだろう。どうしたらいいのかわからず、線路沿いのアパートに戻っても、しばらく呆然(ぼうぜん)としている。今まできっちり規則正しく生活してきたホルテンさんの日常が、ここからどんどん脱線していき、勤務最後の一日は、はじめての冒険へと様変わりしていく。

この後おかしな展開が待ち受けているとはいえ、ハリウッド映画のようなスペクタクルが用意されているわけではない。派手なことが苦手なホルテンさんのように、映画全体も決して派手さはない。けれど、繊細に描かれた日常の冒険は、見終わった後にやってくる違和感がない。「あるわけない、あれは映画の世界」とは思わない。

ベント・ハーメル監督が本作で描きたかったのは、「なじみがあるけれど、奇妙な世界。ほとんどの人々が遭遇し得ないだろうけれど、理解できる世界」だという。ありえない非現実的世界を派手に描いて涙を流させることのない、この無理のないスタイルが余韻まで心地よくしてくれる。感情を激しく起伏させる映画に疲れたら、こんな映画でほっとしたい。

北欧人らしい気質のおじさんの映画は、あんまりほめると照れちゃうだろうから、このへんにしよう。

(どらく編集部・映画担当K)

★Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

2009年02月18日
どらく編集部映画担当
ホルテンさんのはじめての冒険
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