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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

宮崎あおいさんの天才ぶりを確認する「少年メリケンサック」

80年代パンクブームには乗り遅れたものの、90年代に残ったキワモノパンクバンドを取り巻く渦の中で、お客としてそのど真ん中にいたはずだ……私は。けれど大人になるにつれ、パンクとかロックとか、エレクトリックギターをかきならす音楽を「やかましいいいいいいいいいいいいいい!」と毛嫌いするようになった。高校生の私に対して、「そんなの聞いてたら馬鹿になるよ」と眉をしかめた両親と同じく、「あんなの聞いたら馬鹿になるから、娘(いま3歳)が聞かなきゃいいな」と本気で思う。私にとって大人になることとは、うるさい音楽を嫌いになることだった。

 けれど、どっかにまだpunks not deadの細胞が残っているんでしょうね。こういう映画を見ると胸がうずいてしまう。いや、パンク音楽の洗礼を受けなかった人にも必ず体のどこかにpunkな細胞があって、「少年メリケンサック」に共鳴してしまうでしょう。

 レコード会社の新人発掘担当のかんな(宮崎あおい)は、インターネットに投稿されたすごいバンドのライブ映像を見つけます。それは少年メリケンサックというパンクバンド。ライブのあまりの過激さに「これは売れる!」と社運をかけて売り出すことにしますが、実はネット上の映像は25年前のもので、現在の少年メリケンサックメンバーは、全員おやじ。ベースは高円寺の飲んだくれ、ギターは実家の酪農を継ぎ、ドラムは痔で椅子に座れない、ボーカルは事故の後遺症でしゃべれないという状態で、メンバーの不仲もあり活動は不可能と思われたが、インターネット上では話題騒然、全国ツアーも決定し、かんなは後に引けなくなってしまいます……。はたしてツアーは成功するのか!?メンバーは演奏できるのか!?……というのがこの映画。

 宮崎あおいさんが大河ドラマ「篤姫」撮影中に並行してこの映画の撮影もしていたと聞いたので、大河のストレスをぶちまけるがごとくハジけた演技をしていたら、ちょっとうっとおしいな、と思っていました。でも奇天烈なキャラクター・かんなを演じる中にもきちんと抑制がきいていて、天性のコメディエンヌとしての才能を感じました。普通の女優さんだったら、「わたし面白いことしてますよ~」ともっと分かりやすく、得意げな顔で演技すると思うんです。でもそうじゃない。宮崎あおいさんの中では、天璋院篤姫もかんなも同列なんでしょうね。コメディとそうでないもののスイッチの切り替えをすることなく演じているから、こちらも純粋な気持ちで楽しめる。

 メリケンサックのべーシスト、高円寺の飲んだくれを演じる佐藤浩市さんも、こんなにもスイッチの切り替えをしない人だとは驚きだ。これまでの作品ではシリアスで骨太の印象が強いが、これまでの作品と変わらぬテンションで高円寺の変人役に取り組む。

 そして、日本映画を代表する名優であるにも関わらず、日本のインディーズシーン、アンダーグラウンドを代表する名優・田口トモロヲさんと肩を並べても違和感を感じさせぬ、そのメジャーオーラの消し方が天才的! すごいオーラの持ち主ほど、オーラを自在にコントロールできて消すのも上手と聞いたことがあります。

 ボーカル役の田口トモロヲさんは、車椅子に乗っているだけで面白い。ばちかぶりに間に合わなかった世代としては、トモロヲさんのライブシーンを見られただけで幸せ。ギター役の木村祐一さんは、死んだ魚のようでもあり、冷たいナイフのようでもある目つきが最高! ドラム役の三宅弘城さんはまっすぐなバカを好演。存在が純粋で泣ける。

 そのほかこの映画には、遠藤ミチロウさんや銀杏BOYZなど、知る人ぞ知るカリスマが出演している。通常そういう人達が映画に出ると、珍味としてとりあえず並べられるだけのことが多いが、この映画では珍味がメインディッシュとして、宮崎あおいさんのような本当にメインの人と同じ存在感を放っている。それでもメジャーな映画作品として成立させてしまえるところが、監督・脚本・宮藤官九朗さんのすごい所だなぁ。

 エンディング曲、男性2人(向井秀徳さんと銀杏BOYZの峯田和伸さん)が歌う「守ってあげたい」(byユーミン)が気持ち悪くてクセになりそう

2009年01月23日
乾貴美子
少年メリケンサック
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