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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

雪のようにはかなくも美しいラブストーリー ~アリア

 主人公たちの心をすべて見透かしたように澄んだ冬の青い空。かなわぬ恋をそっと包み込むようなまっしろな雪。美しい冬の諏訪の風景をバックに、若い男女4人の切ない恋もようをつづった「アリア」は、珠玉の小品だ。若者たちのラブストーリーといっても、あらゆる世代におすすめできるのでご心配なく。誰にでも、胸の奥に大切にしまいこんだ恋の思い出はあるはずだから……。そして、人はいくつになっても「自分の一番の理解者」を探し求めるものだから。

 物語は、女子高校生のステンドグラス作家ミチ(原田佳奈)と、3年4カ月ぶりに東京から故郷の諏訪に戻ってきたミチのいとこで絵本作家の俊太郎(井坂俊哉)の再開を軸に、ミチに長年想いを寄せる同級生の啓吉(大塚朝之)、東京から一緒にやってきた俊太郎の彼女綾乃(田中伸子)の4人の間で展開する。

 それぞれの揺れ動く心情を、ミステリアスな雰囲気を漂わせる井坂をはじめ、若手俳優たちが好演。なかでも印象的なのが、ミチを演じる原田だ。撮影時の5年前にはまだ無名だった彼女だが、どこか眠そうなはれぼったい目、あどけなさが残るふっくらした赤いほおの女子高生をひたむきに演じている。決死の覚悟の啓吉の告白にOKする際も、ほとんど無表情の彼女。それが、長年、思慕とも恋心ともつかぬ気持ちを温めていた俊太郎との再会により、かわっていく。彼の前でだけみせる笑顔が、たまらなく愛らしい。一方、ミチの心が自分にないことにいら立ちを隠せない啓吉。恋に翻弄(ほんろう)される姿を、感情がほとばしる演技で魅せる大塚にも注目したい。

 自分を想ってくれる相手を選ぶか? それとも自分の気持ちを貫き、かなわぬ恋でも、好意を寄せる相手のそばにいることを選ぶのか? たとえ、痛みが伴ったとしても……恋する人々にとっての永遠のテーマが、ストレートにぶつけられる。ただ、途中で語られる「青い鳥」のエピソードが、さらりと流され記憶に残らないのが、少々残念。物語のカギとなるのだが。

 監督は、本作で劇場公開が3本目となる村松亮太郎。自ら脚本、出演もこなしマルチな才能をみせる。美しい自然とともに、鏡、暗闇に浮かび上がるステンドグラスの薄あかりなど、光を効果的に使ったシーンが印象深い。空間の温度、人物たちの体温が伝わってくるような、独特の映像美をみせてくれる。

 タイトルにあるように、作品ではバッハの二つのアリアが絶妙のバランスで、織り込まれている。エンドロールで流れるのは、「ゴールドベルク変奏曲」のアリア。それに耳を傾けながら、ふと思った。成就しなかった恋ごころは、いったいどこへ行くのだろう? 雪のようにただ消えてしまうのだろうか? 答えは、悲しいほどに澄みきった冬空のみが知るのかもしれない。

★11月29日(土)ユーロスペースより全国順次公開

2008年11月25日
アリア
近藤深雪
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