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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

スイスから聞こえる般若心経 ~マルタのやさしい刺繍

Photo 先日の晩、「オテライブ」というものに足を運んだ。お手ライブでもお寺イブでもなくて、お寺でライブ。プロのミュージシャンが、ススキをたっぷり生けた本堂の中央で、照明もそこそこに、秋の夜風を受けながらギター片手にしっとり歌っていた。

住職はいつもこんな楽しみを企画している。住職といってもまだ30代半ば。大学生の頃に先代の住職である父上を亡くし、大学を卒業するとすぐに修行に出て20代半ばで住職となった。
昔から音楽が好きだったこともあり、数年前からお寺でイベントを催すようになった。お寺という場所にあまりなじみのない若い世代にも、気軽にお寺に足を運ぶ機会となって好評だ。

「マルタのやさしい刺繍」。この映画の舞台は、穴のあいた大きなチーズで有名なエメンタール地方の小さな村。80のおばあさん、マルタは夫を亡くして数カ月。いまだに立ち直れずに放心した様子。
マルタには3人の仲のいい友だちがいる。アメリカかぶれの派手なリージ、老人ホームに入れられたものの溶け込めないフリーダ、実の息子に施設に追いやられそうになっているハンニがいる。
その3人がマルタを元気づけようとしたことから、マルタの若かりし頃の夢、「ランジェリーショップを開くこと」に再び火がともる。
ただ、小さな田舎の村だけに、周りの目は冷ややか。「あのばあさん、頭がおかしくなったんじゃないか」「いかがわしい」とあからさまに顔に出し、嫌がらせまでする。
でもマルタは負けない。夢を実現しようとする若者のように、まっすぐ前だけを見ているので、そんな邪魔も目に入らない。80歳、マルタ、失うものなんて何もない。その姿に3人の友人たちも、今度は自分たちが勇気づけられ、力強いまなざしを取り戻していく。私たち観客も、マルタのキラキラした目とチャーミングな表情を見ていると、いつのまにか「自分だって!」という気分にさせられてしまう。

学生のころ、お寺で教わった般若心経のなかに、「色即是空、空即是色」という言葉がある。この映画を見終えて、久しぶりにこの言葉を思い出した。マルタも住職も、どんな状況でも、自分から行動を起こしていくことで、楽しみややりがいを作っている。本当に大事なのものは、目に見えない。目には見えない大切なものを心にとどめ、時間をかけて育んでいくことには、無限の喜びや楽しみが広がっているんだとしみじみ感じた。色即是空、空即是色。スイスに日本。だれでも、どこにいても、いくつになっても同じ。

(どらく編集部・映画担当K)

10月18日より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

©2006 Buena Vista International (Switzerland)

2008年10月15日
どらく編集部映画担当
マルタのやさしい刺繍
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