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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

できることが凝縮したラスト ~ひゃくはち

 大阪桐蔭が優勝を飾った、夏の甲子園大会。華やかな舞台に立てるのはわずか18人。レギュラーともなればたった9人しかいない。その高校野球をテーマにした「ひゃくはち」、大阪桐蔭のような強豪校の補欠を中心に描いた作品である。

 神奈川県にある野球の強豪校、京浜高校(おそらく横浜高校なんだろうな~、と思ってしまう)。全寮制で全国から野球エリートが集まる学校を舞台に、野球エリートではない、雅人(斉藤嘉樹)とノブ(中村蒼)の2人の高校野球に掛ける思いとその周囲の人たちとのストーリー。

 雅人とノブは自分達がレギュラーになれない現実を受けとめつつ、ベンチ入りを目指す。春の選抜大会を目指す秋の予選は、最上級生が抜け、1、2年生のチームで19、20番のベンチ入りの背番号をもらうことができる。だが、本大会の枠は18人。甲子園の土を踏むことができない。

 夏の甲子園は野球エリートの1年生がチームに加わり、1年生で背番号をもらった人数分春のメンバーは背番号がもらえない。有力な1年生が入ってきたポジションの選手は違うポジションへのコンバートを考えざるを得ない。コンバートするポジションは可能性が高い所を狙うしかない。

 まずは、19、20番の背番号の争いになることは必死だ。それは親友である雅人とノブの争いを意味する。友情は果たしてどうなるのか。高校生という多感な時期に、厳しい競争、友情、団体生活の楽しさ、苦しさ、チーム内の個人の能力差を受けとめながら毎日を過ごしていく。

 高校野球を題材にした青春映画だが、スポーツ新聞の記者であるサチコ(市川由衣)を通した見方を加えることで、単なるスポ根物語になるのではなく、客観的に彼らをとらえようとしている。

 サチコが思っていた、チーム全員が差別なく一丸となり汗と涙にくれる毎日ではなく、実際に目にしたのは、中心選手のためにある活動。その中で、補欠である選手がなぜここまで打ち込むことができるのか。彼女は雅人に心の中で、絶対にレギュラーにはなれないのに、と思いながら「野球本当に楽しい?」と聞いてみる。その答えは「やり遂げてみないと分からないです」だった。客観的には理解することが難しい世界があると印象付けたシーンだ。

 プロ野球に進む選手はほんの一部しかいない。多くの選手は光を浴びることなく、選手生活を終える。ただ、やり遂げた後で、死ぬほどの努力が無駄だった、という人はとても少ない。私もその一人だ。高校時代はサッカー部に所属していた。チームは全国大会にでるほどの強豪ではなかったが、神奈川県200校の上位16には入るチームだった。私も彼らと同様に補欠だったが、レギュラーのために組まれた厳しい練習や生活が無駄だったと思ったことは一度もない。

 映画を見た後に、体育会であれ文化系であれ、高校時代に一生懸命打ち込んだことを思い返してみて欲しい。今の生活では考えられない無駄、不条理がたくさんあったと思う。でもその中で、自分ができることを一生懸命考えていたはず。自分にできることに精一杯望んだラストのシーンは輝いてみえるはずだ。

★テアトル新宿ほか公開中

2008年08月28日
アーリー
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