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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

まさかこの人が監督するとは! ~蛇にピアス

なにが驚いたって、監督が蜷川幸雄さんなんですよ。

芥川賞を受賞したことで話題になった金原ひとみさんの小説「蛇にピアス」。当然映画化されるだろうと思っていたが、テレビドラマ出身の監督がメガホンを取って、ほぼ新人の女優起用して、主題歌に椎名林檎かなんかが流れて、そこそこの仕上がりの映画でそこそこの興行収益になるような予感がしていた。
けれど、原作の異物感がそれを許さなかったんですね。海外からも映画化を狙っていたという競争の中、監督することになったのは演劇界の鬼才・蜷川幸雄氏。

72歳にして年間10本近い舞台を演出する蜷川氏は、以前にも映画を撮っている。

81年「海よお前がー帆船日本丸の青春―」
81年「魔性の夏 四谷怪談より」(出演:萩原健一、関根恵子、夏目雅子)
03年「青の炎」(主演:二宮和也)
04年「嗤う伊右衛門」(主演:唐沢寿明、小雪)

この中で「青の炎」は「蛇にピアス」とテイストが似ている。どちらも、青白い光の打ちっぱなしの部屋をカメラがパーンするカットが印象的。「青の炎」でやり残したことを、「蛇にピアス」でやりたかったのかも知れない。

あてもなく渋谷をぶらつくルイ(吉高由里子)は、モヒカン頭に顔面ピアス、全身刺青でささやきかけてきたアマ(高良健吾)に見たことのない舌を見せられる。“スプリットタン”・・・アマの舌は蛇のごとく先端が二つに割れ、左右が別の生き物のように動くのだった。目的は分からぬまま、ルイも自らの舌を蛇にすることを決意する。そのためには、舌にピアスをし、拡張を繰り返して穴を大きくしていくしかない。舌に穴をあけてくれたのは彫り師のシバ(ARATA)だった。ルイはアマと同棲しつつ、サディスティックなシバにもひかれていく。

蛇のように動く舌を、舌に刺す針を、サディスティックなセックスを、映像でしっかり見せていた。舞台ではド派手にドラマチックに人間をあばく蜷川氏だが、ことさら痛みや変態性を強調する見せ方はしていない。いたってドライに、原作のザラザラを再現していく。その、監督と原作の距離の取り方がいいな、と思った。

72歳の大人に、舌にピアスをはめた若者の気持ちが共感できるはずがない。けれど、若者の心の形はどんな風にいびつなのか、必死で知ろうとしている監督の目線が映像として伝わってくる。説教せんと上から見下ろした目線でなく、誠心誠意、同じ高さから見ている目線。

私には、舌が蛇になった時の気持ちが分からない。けれど、蛇の正体をあばこうとする監督の好奇心にものすごく共感できた。

主演の吉高由里子さんの演技が後半に進むにつれどんどんうまくなっていくのは、これぞ“世界のニナガワ”の演出力!!

★9月、渋谷シネマGAGA!、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

2008年07月08日
乾貴美子
蛇にピアス
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