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映画散歩

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アンディ・ウォーホルとボブ・ディランの恋人と死 ~ファクトリーガール

Inui080222  私のまわりにも、こういう人がいる。いや、いた。と言った方がいいかも知れない。きらめくスポットライトを浴びた後に、どうしてか破滅的な落ちぶれ方をしてしまう人。いつの時代にもそういう人がいる。最近だとブリちゃん(ブリトニー・スピアーズ)とか? そういうディーバを想像すればいいかも知れない。けれど今の時代だとケアシステムがしっかりしていて、落ちぶれようにも中途半端にしか出来ない。これは破滅的な人がとことん破滅的になれた時代の、悲しいミューズのお話

 アメリカの名家・セジウィック家の令嬢イーディ(シエナ・ミラー)は、人懐っこい笑顔と独創的なファッションセンスの持ち主でした。画家を目指しニューヨークにやってきたところで、当時一世を風靡していたアンディ・ウォーホル(ガイ・ピアース)に出会います。「僕の映画に出ないか」とウォーホルに誘われ(ウォーホルは誰にでもそう声を掛けていたらしいのですが・・・)スクリーンに登場したイーディは一躍時の人となりました。ヴォーグ誌の表紙を飾り、習っていたバレエのレオタードを脱ぐのが面倒だからとレオタードの上にボートネックのセーターをはおっただけのファッションを流行させ、ウォーホルからも“スーパースター”と呼ばれる存在になります。

 しかし、光の裏に影あり。イーディはゆがんだ家庭環境で育っていたため精神的に不安定で、次第にドラッグにはまっていきますボブ・ディラン(ヘイデン・クリステンセン)と出会い(ボブはまだ存命なせいか、映画の中では別名ビリーとして登場)恋に落ちるもウォーホルからは見放されます。あてつけのようにウォーホルは新しいミューズ・ニコを見出し、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのボーカルとしてデビューさせました。

 最終的にはボブにも捨てられたイーディを慰めてくれるのは・・・ドラッグ。両親からの仕送りを止められズタボロになった彼女は、28歳の若さで、薬物の過剰摂取によりこの世を去ります

 おきまりの結末。こういう終わり方しか出来ない女性だったのでしょう。たくさんの人にとって“運命の人”なのに、自分の運命は悲劇でしかない。輝かしい時代を描いた前半にも死の影がちらつくので、全体的に重苦しい雰囲気の映画です。

 イーディを演じたシエナ・ミラー口元の動きが下品で魅力的ですね。静止画で見ると文句のつけようがない美人なのだけれど、動く時にバタ臭くて魅惑的な曲線を描く。今にも泣きだしそうな瞳のごとく、言えなかった言葉が今にもあふれ出しそうな口元。顔から独立したひとつの生き物みたい。すごく素敵。

 イーディが両親にはじめてウォーホルを紹介した時のやりとりが面白い。字幕とは違うかも知れませんが、記憶をたどって書き起こすと・・・

 父「娘がどんな男を連れてくるか心配で仕方なかったけれど、君なら安心だ。」

 ウォーホル「???(褒められたのかと一瞬喜びそうになる)」

 父「なぜなら君はホモセクシャルだからね。」

 父「何を食べるかい?」

 ウォーホル「・・・(メニューを見て選ぼうとするが)」

 父「君は顔が青白いから肉を食べなさい!」

 いささかクレージーな父親が、時代の寵児・ウォーホルをめった切り。思わずこのくだりは笑ってしまいましたが、父親とイーディが禁断の笑えない関係にあったことは後半で明らかになります。

 孤独や、その先の破滅は、どうしてか美しく見えてしまうことがある。同じく“ウォーホルのミューズ“ニコ・イコンの生涯を追ったドキュメンタリー映画『NICO ICON』(DVD出てます)と合わせて見ると面白いかも知れません。

★GW、シネマライズ他、ロードショー

2008年02月22日
ファクトリーガール
乾貴美子
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