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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

肩肘をはらず、のんびりと~ 「ここに幸あり」

 思いがけないこと、思い通りにいかないこと、人生はそんなことの連続だ。ただし、少し考え方をかえると物事は180度変わって見える。例えば、突然職を失った時、悲嘆にくれ鬱々(うつうつ)と部屋にこもるのか?はたまた、神様がくれた休暇だと思い、あわただしい人生をひと休みするか?

 「ここに幸あり」の主人公ヴァンサンは後者を選ぶ。舞台はパリ、民衆のデモが起きる中、そのきっかけとなる発言をしたヴァンサンは、責任を問われ、大臣の職を追われる。富も名誉もなくし、豪華な官邸も追い出される。妻にも愛想をつかされ、セクシーだが、浪費好きな愛人も去る(これは幸運かも?)。

 でも何故か、ヴァンサンには悲壮感が漂わない。もちろん彼なりにショックは受けている。部屋でそっと髪が淋しくなった頭を床につけ、決して身軽ではない体で逆立ちしてみたりする。これがイライラを静める方法だというから、なんともお茶目だ。彼は、とりあえず母親を訪れ、昔住んでいたアパートの鍵を受け取る。ところがその部屋はアフリカ人達によって不法占拠されていた。まさに踏んだり蹴ったりなのだが、ヴァンサンはそれでもめげない。「なるようになるさ」といった持ち前ののんきさ、明るさが彼の魅力だ。町中で出会った古い友人に、大臣をやめ、凡人に戻ったなと言われると、「人間になった」と答える。

 そんな彼の周りには、魅力的な女性達が次々と現れ助けの手を差し伸べる。交通手段に困っているとスクーターの後ろに乗せてくれたり、街を歩いていて、上から汚物が降ってくると、シャワーを貸してくれたり。

 本作品の監督グルジア出身のオタール・イオセリアーニは、身内や友人など演技経験のない素人を起用することで知られている。実は、主役のセヴラン・ブランシェも監督の友人で、今回が映画初出演。コミカルで憎めないキャラを見事に演じている。作品では、決して派手な出来事は起きない。ただ、ヴァンサンが古い仲間達とワイングラスを傾け、音楽を奏で、ゆったりとすごす日々が描かれている。人生における本当に大事なものは何か?イオセリアーニは、それを説教くさくなくじんわりと伝えてくれる。

恵比寿ガーデンシネマにて 公開中

2007年12月18日
ここに幸あり
近藤深雪
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