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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

カンヌ映画祭・カメラドール受賞「JELLYFISH」で暖をとりましょう。

 2007年のカンヌ映画祭でカメラ・ドール(最優秀新人監督賞)を受賞した作品をご紹介しますね。しかしこの映画、カンヌと聞いて連想するような派手さはなく、素朴で、ほわんと優しい気持ちにしてくれるんです。

 大きく分けて3つのストーリーが同時進行していくのですが・・・・・・最初にスクリーンに登場したのは結婚式場でウエイトレスをしているバティア。彼に同棲を解除されたばかりで、髪はボサボサ、マニキュアも禿(は)げたまま。彼女の母親は貧しい子供を救うための募金活動で忙しく、バディアの寂しさを埋めてはくれません。ある日海岸で佇(たたず)んでいると、水着に浮き輪をつけただけの見るからに訳ありな少女がバディアについてきました。なぜか使命感を感じてバディアは少女の世話をすることになります。 

 バディアの物語と並行して語られるのは、新婦・ケレンと新郎・マイケルの物語。二人はバディアが働く式場で結婚しましたが、ひょんなことからカリブ海への新婚旅行を断念し市内のホテルに宿泊します。そこで奇妙な美しさを放つ詩人の女性と出会い、新婦は新郎と詩人の関係を疑うようになります。 

一方フィリピンから出稼ぎにきているジョイは、女優の娘を持つマルカの介護ヘルパーとして働いていました。女優の娘とマルカの間には大きな溝があります。招かれてもいないのに娘の舞台は見ないとマルカは頑(かたく)なでしたが、ジョイのすすめで娘の舞台を見に行くのでした。 

 客席のマルカを見つけて娘は微笑みます。これで長年のギクシャクした関係は修復に向かうのかと思いきや、マルカは娘の演技に否定的な感想を述べ、結局二人は絶縁してしまいます。“接触のない母だった”と、娘はマルカを責めます。けれどヘルパーのジョイが悲しみに暮れている時、マルカはジョイを素直に抱きしめてあげることができる。同じことが、実の娘に対してはどうして出来ないんだろう。 

 みんな悪人ではないのに、肝心のひとことが言えないせいで歯車が狂ってしまう。もどかしくて、閉塞された関係。それでもホッと心がほぐれる瞬間があって、例えば、娘が舞台に登場した時に見せるマルカの笑顔や、観劇の帰り道で見せた楽しそうな表情が、本当にあたたかい。 

 緊張した関係ばかりを描いた映画の中でじんわり温かい表情を見つけると、素晴らしい拾いモノをしたような気持ちになります。瞳の奥に悲しみをたたえた俳優たちがふと見せる幸せの瞬間の演技にご注目下さい。 

多くの具体的エピソードからひとつの抽象的テーマを提示するタイプの映画。私は見終わった後、大切な人にいつも言えてない一言を言おう、と思いました。

★2008年3月渋谷シネ・アミューズほか全国順次公開

2007年12月28日
乾貴美子
JELLYFISH
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