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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

真剣なる棺おけ選び ~ここに幸あり

「棺おけを自分で選ぶ」などという場面を見たのは、人生はじめてかもしれない。冒頭のシーンは、男たちが数人、街の棺おけ屋で自分用のものを選んでいる。1人がこれがいいと主張すると、それは自分が先に目を付けていたんだと、別の男が言い張る。言い合いしながら選ぶ棺おけなんて、なんだか不吉な気がするけれども、男たちは真剣そのもので、おかしい。死んでもなお何かを主張したい、所有したいのだろうか。

舞台はパリ。時代は今かもしれないし、ちょっと前かもしれない。主人公のバンサンは、大臣。だったのだけれど、その職を失う。カバン一つで官邸を後にする。別れた妻にも、愛人にも冷たくされたバンサンを、変わらない態度で迎えてくれたのは、古い友人や家族、優しい女たち。公園で語らったり、友だちの経営している店で酒を酌み交わしたり。生活は一変するけれど、その姿はだんだんと違和感がなくなっていく。
慣れたものや、居心地のいいものの中にいると、そこから出たくなくなってしまう。出ることなんて、もはや頭の中になくなる。それでいいのかどうかと客観視できなくなる。そこへ突然、変化が起こる。予期せず勝手に起こる。起こったときにどうするか。それが生き抜く力。バンサンは最初こそあわてるものの、その変化を楽しんでいく。さすがフランス人、ケ・セ・ラ、セ・ラ~と歌が聞こえてきそうだ。

おもしろいのは、キャスト選び。オタール・イオセリアーニ監督は、自分の知り合いでキャストの大部分を固める。知り合いの俳優ではなくて、知り合いの一般人。なんでもない人のなんでもないような肩の力の抜けた演技が、作品の雰囲気を作っている。加えてミシェル・ピコリの女装(といっても、おばあさん)が利いている。ちょっと力持ちで男性っぽいところもちらと見せる大きなおばあちゃんは頼もしい。

なんだか楽しくなってきた。大臣じゃなくたっていいんじゃないかな。棺おけなんてなんだっていいよ。生きていることが楽しい。生きてるだけで丸もうけ。ここにもあそこにも、どこにだって幸せはある。ようです。

(どらく編集部・映画担当K)
★12月1日より恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー

2007年11月30日
ここに幸あり
どらく編集部映画担当
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