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映画散歩

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喪失とのたたかい~ 再会の街で

 人生において乗り越えることが最も難しい出来事の一つ。それは愛する者の死ではないだろうか?
 「再会の街で」の主人公チャーリー(アダム・サンドラー)は、まさにその苦しみのまっただなかにいる。あの9.11のテロで標的となった飛行機に、最愛の妻、幼い娘たち、ペットの犬が搭乗。彼は家族のすべてを、たった一日で失ってしまう。以来、歯科医としての仕事を捨て、ひたすら自分の殻に閉じこもりきり。5年の月日が流れても、その事実と直面することすらできない。 そんなチャーリーと偶然マンハッタンの街角で再会するのが、彼の大学時代のルームメートのアラン(ドン・チードル)だ。歯科医としての仕事も好調、家族にも恵まれ順風満帆そうなアランだが、実はその理想的な生活にどこか息詰まるものを感じている。 

 本作品は、そんな対照的な二人が再び友情を深め、それぞれの人生を立て直す糸口をつかもうとする姿を描いていく。下手をするとベタ甘になりそうなストーリーだが、アメリカ人監督マイク・バインダーは適度なユーモア、さらに70、80年代のロックナンバーを散りばめ、涙と笑いの入り混じったバランス感覚のよい感動作に仕上げている。

 何より作品を際立たせているのが、サンドラーの熱演だ。これまでコメディー作品でのヒット作で知られる役者だが、そのイメージから一変。抜け殻でありながら、子供のような無邪気さを秘めた、切なくもいとおしいチャーリーをつくりだしている。ボサボサの髪、耳には大きなヘッドフォンをあて、原付スクーターでマンハッタンの街中をまるで浮遊(ふゆう)するように走るチャーリー。日々、自宅リビングに設置された巨大モニターでロールプレイングゲームに没頭。または地元のクラブや、やはり自宅にある音楽ルームでのドラム演奏に明け暮れる。唯一の「身内」として彼の身を案じる亡き妻の両親、友人たちとの連絡もたち、過去を思い出させるものを注意深く避けながら、自由気ままに時を過ごす。それでも、ふとした時に地雷を踏むかのように、怒りや悲しみの感情が爆発する。サンドラーの繊細かつ深みのある演技はアカデミー賞主演男優賞に値し、ノミネーションは間違いないだろう。また、チャーリーのペースに戸惑いつつ、巻き込まれていくアランを演じたチードルも印象深い。

 チャーリーのようなケースでなくとも、愛するものを突然、理不尽な出来事で失う可能性は誰にでもありうる。どれほど深い悲しみ、絶望からでも、人は立ち直る力を備えているのだろうか?また、その傷を癒(いや)すためには何が必要なのか?「9.11による悲劇」は設定にすぎず、本作ではもっと普遍的な問いを観る者に投げかけている。

★2008年お正月 ロードショー

2007年11月02日
再会の街で
近藤深雪
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