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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

ささやかな日常が壊れる時 ~ある愛の風景

人間ドラマのジャンルにおいて、映画で描かれる題材は、実はそれほど多岐に富んでいないのではないかと思う時がある。男と女が出会い、恋に落ち、別れる。家族や恋人が事故や戦争といった悲劇で引き裂かれる。または、人の死やその他の思いもよらぬ出来事で人生が翻弄(ほんろう)される。そんな中、何が極上のドラマと凡作の分かれ目となるのか?それは登場人物の感情が、どれだけリアルかつきめ細やかに描かれているかに尽きると思う。

デンマークの女性監督スサンネ・ビアの「ある愛の風景」(2004年)では、主人公達のささやかな日常が予期せぬ出来事で変わっていく。そのつど湧き上がる感情の描き方が卓越している。見るものの心の奥底を静かに、しかしいつまでも揺さぶる1本だ。

物語は、エリート兵士ミカエル(ウルリッヒ・トムセン)が、国連軍兵士として戦禍(せんか)のアフガニスタンへの派遣が命じられるところから始まる。美貌の妻サラ(コニー・ニールセン)、可愛い二人の娘と幸せな日々を送るミカエルは、彼の両親にとって自慢の息子だ。一方、ミカエルの弟ヤニック(ニコライ・リー・コス)は刑務者帰りで定職も持たないろくでなしとして家族から孤立。そんなある日、アフガンからサラの元にミカエルの訃報が届く。その喪失を抱えながらも懸命に日々を送るサラ。そんな彼女を傍らで支えたのは、義理の弟ヤニックだった。ところが、実はミカエルは、捕虜となって生き延びていた。帰国を果たし最愛の家族と再会するも、まるで別人のように荒々しくなってしまったミカエル。彼は、誰にもいえない秘密を背負っていた。

無駄を徹底的にそぎ落とした、アナス・トーマス・イェンセンの脚本が素晴らしい。メインのキャラクターを演じた3人の役者達は、少ない台詞の中、抑え目の演技で、喜び、喪失、絶望、苦悩を生々しく表現。彼らの心臓の鼓動、息遣い、不安に心がざわめき立つ音が、画面を通して感じられる。

 人生は矛盾に満ちていて、喜びの影に思いもよらぬ「残酷」という名の魔物が潜んでいる。そんな時、私達は無力で降伏するしかないのだろうか?監督の答えは、映画のラストにこめられている。

スサンネ・ビアの前作「しあわせな孤独」と本作「ある愛の風景」の2本は、既にハリウッドでのリメイクがすすんでいる。また最新作「アフター・ウェディング」も10月に日本で公開。その名を覚えておきたい、今注目の監督の一人だ。

※11月下旬 シネカノン 有楽町2丁目にてロードショー

2007年10月03日
ある愛の風景
近藤深雪
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