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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

食べ物はどこからくるの? ~いのちの食べかた

 アメリカにホームステイをしていた際、最初の頃どうにもなれなかったことがある。それは、食事を食べ始める際に何も言わないことだ。日本語と英語では直訳できなかったり、その概念がない言葉というのが多々ある。まさに「いただきます」がそうだった。辞書をひいても 「Let’s eat!」 これでは「さあ食べよう」。せいぜい「They look yummy (おいしそう)」などといってみるが、しっくりこない。ホストマザーには食後に賛辞の言葉を言えばいいが、どこか違和感があった。

 実は「いただきます」には作った人への感謝と共に、「命をいただく」という食べ物、生産者達への感謝の気持ちもこめられている。無意識に習慣として使っていた言葉だが、私があの時感じた違和感は、彼らに対する思いが表せないということだったのかもしれない。
 そんな「いただきます」の言葉の意味を改めて痛感させられる1本、それがオーストリア生まれのニコラウス・ゲイハルター監督のドキュメンタリー映画「いのちの食べかた」だ。この作品では、普段当たり前のように口にしている、鶏、豚、牛達がどのように飼育され、プラスティックのトレイにのった肉の塊になるのか?また野菜はどうやって育てられ、収穫されているのか? 様々な食糧生産の現場が紹介される。
 ベルトコンベアでまるで物のように運ばれていく大量のひよこ達、メリーゴーランドのように巨大な回転する装置の上にずらーっとのせられ、次々に乳を絞られていく牛。水揚げされると、あっという間にロボットアームのようなもので解体されていく魚達。ほうぜん、あぜんとする光景が次々とカメラに収められている。決して何かを非難するわけではなく、食料が大規模な機械化、徹底した合理主義で管理、生産されている今日の現状をそこに浮き上がらせる。
 ぐるぐる回っているひよこに、人手で一匹一匹つけているものは何?何故、りんごの収穫では、りんごがプールにぷかぷか浮いているの?そういった疑問に対する答えは与えてくれない。映画の中で作業を説明するナレーションはいっさいない。音声は機械音、そして作業音のみ。登場する食品工場や人物の名前も一切でてこない。みな黙々と働いていて、会話もない。しかし、だんだんとこの映画の独特のリズムに慣れてくるから不思議だ。例えば、広大な農地、真っ青な空の下、ロボットのような機械がポツンとある。するとそのマシーンからスルスルと左右にアームがのびていく。いったい次は何?水やり?農薬散布?思わずワクワクする。
 特筆すべきは、どの映像も想像性を掻(か)き立て、インパクトかつユーモアがあり何より美しいことだ。ストーリーを追い、娯楽性を求める人には単調かもしれない。どちらかというと、映画というより美術館で絵や写真を鑑賞するよう作品と対話をしたい人にお勧めの1本だ。

11月 シアター・イメージフォーラムにて公開

2007年10月01日
いのちの食べかた
近藤深雪
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