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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

のたりのたりと物語 ~めがね

 コンタクトレンズが主流になってから、テレビでメガネのCMを見る機会がめっきり減った。それでも、いまだにメガネはあこがれだ。

 なぜなら「メガネ」にはロマンがある。牛乳瓶の底メガネから、おしゃれメガネまで、なんでもござれだし、コンタクトレンズなんかとは歴史がちがう。
 自慢できるものといったら視力ぐらい。コンタクトレンズはおろか、メガネのお世話にもなったことがない私にもメガネに関しては歴史がある。
 高校3年生の秋、放課後の図書室。勉強に煮詰まると書棚に向かう。手に取るのはきまって「細雪」。主人公の雪子があこがれだと語った、現代文の丸メガネの先生の影響だった。

 昨年公開された「かもめ食堂」。舞台はヘルシンキ。4年前に北欧へ旅行したことが懐かしくなって、愛着が沸いた作品だった。主役の小林聡美さん、脇を固めるもたいまさこさん、片桐はいりさんを、この映画を見て、より好きになった。そのキャスト、スタッフをほぼそのままに作られたのが、この「めがね」。
 北の次は南へ。舞台を与論島に移し、話はのんびり始まり、のんびり終わる。
 島といっても「リゾート」といった雰囲気はではない。華美だとか最新といったものがなく、すべてがひたすらにのんびりしている。
 「かもめ食堂」では、サチエ(小林聡美)が作るコーヒーとおにぎりが欲しくなったけれど、今度はサクラ(もたいまさこ)が浜辺の小さな小屋でふるまう氷あずきが食べたくなる。
 ただその氷あずきは、お金では買えない。子どもは工作を、大人は収穫したものなんかを代金として渡す。そんな氷あずきを、一人旅でこの島へ来たばかりのタエコ(小林聡美)は欲しいと思わない。
 メルシー体操もそう。3拍子に乗って、風になびくように体をゆらすという、みんなの朝の日課は奇妙だし、観光場所を尋ねれば、そんなところはないから、たそがれろと言われるだけ。 都会で忙しく暮らしているであろうタエコにとっては、こんなペースがさっぱり理解できず、まったくついていけない。
 ただ時間が経つにつれ、メルシー体操に参加したり、食卓を囲むうち、飴が口の中で溶けるように、少しずつそののんびりとしたペースになじんでいく。そして、いつのまにかなくなる飴のように、普段なくてはならないと思い込んでいる「メガネ」の存在も忘れてしまう。

 思い出した。現代文の授業で習った句、「春の海ひねもすのたりのたりかな」がぴったりだ。次の休みは、「細雪」を読みながら、氷あずきといこうかな。

(どらく編集部・映画担当K)

※9月22日よりテアトルタイムズスクエアほか全国ロードショー

2007年09月19日
どらく編集部映画担当
めがね
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