朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト

メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

  • トップ
  • 地球発
  • マネー
  • ライフスタイル
  • 極める
  • からだプラス
  • エンタメ

エンタメ

  • 映画散歩TOPへ

映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

現実と幻想 ~パンズ・ラビリンス

 主人公の少女(オフェリア)は幸せだったんだろうか。映画を見終わってしばしの間考えた。自分の思うようにいかない現実世界と迷い込んだ幻想の中で、さまざまなことを思いながら成長していく姿は物哀しい。

 この映画は、2007年度のアカデミー賞で撮影賞、美術賞、メイクアップ賞に輝いた映像のすばらしさだけではなく、ダークファンタジーと呼ばれる今までのファンタジーとは異なる、暗い面をもったおとぎ話が我々を引き込んでいく。暗い面とは、人間が持つ残酷性だと思う。映画の中盤で、母(カルメン)が「世の中は残酷、人生はおとぎ話じゃないのよ!」とオフェリアに強く話したその言葉がこの映画全体を表しているのではないか。

 監督のギレルモ・デル・トロは、ファシズムが究極の恐怖を象徴していると位置づけ、ファシズムが強く出せる、フランコ将軍の軍事政権下のスペインを舞台にしたようである。そして恐怖から逃げる場所を迷宮(幻想世界)とし、夢ある世界として描いた。2つの世界が複雑に絡み合って進んでいく物語だが、両方の世界ともに、残酷で哀しい場面が多い。それ故にダーク・ファンタジー作品と呼ばれるのであろう。

 映画の舞台は、1944年のスペイン、内戦が終了した後のフランコ将軍の圧政に反発するゲリラと政府軍の戦いの最前線という暗黒な現実世界が舞台となる。それは、やさしい仕立て屋だった父が亡くなった後に、母(カルメン)が再婚した、フランコ軍のビダル大尉が駐屯する山奥なのだ。

 大人の思いと子供の思いは大きく異なる。一人で生きていくのは寂しいと語り、ファシズムを体現しているような冷酷なビダル大尉と再婚した母。おとぎ話が好きで、新しい父に恐怖を抱き好きになれないオフェリア。2人は現実と幻想という異なる世界と共に生きようとする。

 幻想へとひた走るオフェリアには現実世界では多くの悲劇が待ち受ける。冷酷な父の言葉や振る舞いに常に恐怖を抱きながら、多くの悲劇の中で、恐怖から逃れるために、オフェリアの幻想はしだいに大きくなっていく。

 やがて、オフェリアに幸せになって欲しいという願いが大きくなってしまったからなのか、どこまでが幻想なのか分からなくなってきてしまう。そんな思いの中で、迎えるエンディング。やはり現実はこうだったのか、と気づくと同時に残酷で暗黒の現実の中で、オフェリアにとって、幻想が生きていくための一筋の明かりであったことも。

★10月、恵比寿ガーデンシネマほか全国ロードショー

どらく編集部映画担当・M

2007年08月17日
どらく編集部映画担当
パンズ・ラビリンス
トラックバック (0)
  • バックナンバー

ライター紹介

ココログ

画面トップへ

※当サイトの推奨ブラウザは、Windows Internet Explorer6.0以上、Firefox 1.0以上となります。
Copyright The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
どらくに掲載の記事・写真の無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。

©朝日新聞社
無断複製転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。