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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

日常は偶然のかたまり ~ある愛の風景

昨夜の夢は強烈だった。両親と向かい合って座り、目の前にいるのは私の本当の父ではないのだと知らされる。人生30年、初めて見た夢だった。

国連軍のエリート兵士ミカエルには、妻・サラと幼い二人の娘がいる。小さな頃から両親の誇りである彼は、刑務所帰りの弟、ヤニックとは対照的な存在。

ヤニックが刑務所から戻ってくると、入れ替わるようにしてミカエルは戦渦のアフガニスタンへの派遣を命じられる。「行かないで」と駄々をこねる長女をなだめて出発すると、やがて撃墜されたという訃報がサラに届く。サラが酔いどれのヤニックの耳にも伝えると、さすがに彼の胸にも鋭く突き刺さる。それからヤニックは変わっていく。ヤニックと周りとの関係も変わっていく。尖った気持ちも角が取れてゆき、父親とのわだかまりもとけ、サラとも打ち解けていく。お互いにいたわり合って、ようやく少し落ち着きを取り戻してきたころに、生き延びているのを発見されたミカエルが戻ってくる。ただ、アフガニスタンでの出来事がミカエルの人格を変えていた。当然、家族との関係は前のようにうまくいかなくなっていく。

自分の身には起こりそうもない出来事なのにどうしてか親近感を覚える。ここまで極端ではないにしろ、似たようなことは誰の身にも起こりそうなこと。スサンネ・ビア監督は、ささやかな日常が突然思いもよらない運命や事件によって変わってしまうこと、そしてその劇的な変化へどう対処するのかに、興味があり、この作品はライフスタイルにおける愛の条件を描いたラブストーリーだという。

夢に見たような出来事は、いまのところ自分の身に起きていないけれど、何らかの事件が自分や自分の周りに起こったら。あたりまえだと思っていたことがあたりまえではなくなり、日常生活が一変してしまったら。実はあたりまえにあることなど何もなくて、平凡だと思っている日常こそ、偶然のかたまりなのかもしれない。

ストーリーを映し出す画面。その切り取り方というのか、構図というのか、とても洗練されているように感じた。スクリーンに展開される絵がとにかく美しく、見とれてしまう。まるでインテリア誌を見ているような場面もあれば、顔の中、目だけがスクリーンいっぱいに映され、その心のうちを二つの青い目が語る。角度や距離をさまざまにして、登場人物の情景と心情がよく伝わってくる。取り上げる題材と並んで、細やかでよく練られた画面こそ、ビア監督の持ち味なのだろう。

11月下旬シネカノン有楽町2丁目ほかにて公開
どらく編集部映画担当・K

2007年08月30日
ある愛の風景
どらく編集部映画担当
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