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映画散歩

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あの日の記憶~ ヒロシマナガサキ

 「1945年8月6日何が起きたかわかりますか?」
スティーヴン・オカザキ監督の「ヒロシマナガサキ」は渋谷を歩く若者達への問いかけで始まる。クレープを片手に小首をかしげる者、「えーわかんない!」「地震?」と答える者。戦後60余年、人口の75%以上が1945年以降生まれの今だからこそ、この作品が必要だと痛感せられる一瞬だ。

 1952年ロサンゼルス生まれの日系3世であるオカザキ監督は、英訳の「はだしのゲン」を読み、人類史上初めて原子爆弾の被害を受けた広島、長崎への関心を深める。25年の年月をかけて完成させた本作品では、500人以上の被爆者に会い、その中から14人の証言をクローズアップ。その中には「はだしのゲン」の作者の中沢啓治も含まれる。
 さらに興味深いのが航空士、科学者ら原爆投下に関与した4人のアメリカ人の証言、貴重な当時の記録映像や資料の数々が交えられている点。過剰な演出を一切排除し、シンプルにその惨禍を包み隠さず伝える本作品は、アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞に輝いている。

 淡々と穏やかに当時のことを語る被爆者たち。「動く物は死体からわいてくるハエのみ」の焼け野原。首のない赤子を背中に抱く母親。水を求め飛び込んだ人々の遺体で埋め尽くされた防火水槽。その静かな語り口で伝えられる彼らの体験はあまりにも壮絶だ。
生き残った被爆者は皆、身内の誰かを失い、自らの心身に深い傷を負っている。差別と戦いながら、生きる勇気を持ち続け、今日に至る。その姿は見るもの心をわしづかみにする。

 身体的損傷を受けた被害者の記録フィルムは、思わず目を覆いたくなるシーンもある。しかしこれらを彼らは肉眼で見てきたのだ。目を背けるわけにはいかない。
証言者の一人、居森清子は、当時11歳。爆心地からわずか410メートルの場所にて被爆。在校生620人の学校で唯一の生き残りだ。
「これを伝えていくために生かされているんだよって、思いました」と語る。
そんな被爆者達の思いが、この作品を通じて一人でも多くの人に触れることを切に願う。
真夏の日差しが照りつける中、一口の水を求めて死んでいった被爆者達。1年に一度、この季節、その痛ましい史実が起きたことを思い出して欲しい。そして原爆投下の時刻、8月6日8時15分、9日11時2分、サイレンが聞こえたら、その意味を理解して欲しい。

*岩波ホールにてロードショー 他全国順次公開

2007年08月01日
ヒロシマナガサキ
近藤深雪
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