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映画散歩

シネマでしゃべろ 十人十色、それぞれのイチオシは?

おめでとう、ありがとう ~ミス・ポター

懐かしい友達がスクリーンに映っている。青い上着に金のボタン。ピーンと耳を立てて、こちらを向いている。文字さえ読めなかった20数年前。寝るのもトイレも一緒だった友達は、今なお、何も変わらない姿でそこにいた。

1902年のロンドン。一冊の小さな絵本が、誕生した。「ミス・ポター」は、ピーターラビットの絵本の作者、ビアトリクス・ポターの半生を描いた作品だ。

上流階級に生まれ、何の不自由もない裕福な家庭で育ったビアトリクスは、子供の頃、ひと夏を過ごした湖水地方で出会った友達の絵を描いて遊んでいた。ロンドンで育った彼女が、豊かな自然と広大な農場に出合ったことで、ピーターラビットが誕生した。

32歳、独身。良家の子息との縁談を断り続けたビアトリクスは、母親の心配をよそに、ようやく夢をかなえた。ピーターラビットは小さな絵本となった。あきらめなかった夢の実現とともに得たのは、賛同し理解してくれる友人。希望を分かち合う喜びにあふれ、意気揚々とした日々が始まった。そしてクリスマスパーティーの夜、人生最高の喜びが。喜びのあとには、悲しみが。まるでお話のような展開だ。

世界一有名なウサギの物語の背景、ビアトリクス・ポターの人生だけでなく、ビクトリア調の衣装や調度品、湖水地方の自然など、手の込んだ彩りは、それだけでも十分なほどの魅力をもっている。

印刷所で職人の手で刷られる絵本。ものは、たくさんはないけれど、一つひとつ丁寧に作られる、手仕事のすばらしさも描かれている。

衣装や印刷の技術は、革新的な変化をとげたのにくらべ、湖水地方の美しい自然は、約100年後の今と、それほど変わらないだろう。ビアトリクスは、自分の描いた作品だけでなく、ピーターラビットを生んだ自然、湖水地方の農場の風景という大きな遺産をのこしてくれた。悲しみを乗り越えてなお、大切な人の言葉「美しいものは残さなければ」は、彼女の中で永遠に生きた。

風景を描くのは苦手だと語った彼女が大切にした「心の故郷」の風景。描けなかった自然への憧れと尊敬の思いを、ナショナル・トラストに寄付するという、自分にできることにかえて守った。誕生から105年経った今も色褪せない「絵本」と「自然」、二つの大きな大きな宝物をのこしてくれたことに感謝しながら、エンディングの歌に耳をかたむけ、青いカーディガンのボタンをしめ直した。105周年、おめでとう。ありがとう。

9月、日劇3ほか全国ロードショー
どらく編集部映画担当・K

2007年08月13日
どらく編集部映画担当
ミス・ポター
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