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映画散歩

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ライター泣かせの作品 ~バベル

 見る前に、極力ストーリーを知らないほうがいい作品がある。映画評を書く上で、そんなジレンマに陥るが時がある。菊地凛子が聾唖(ろうあ)の女子高生を演じ、アカデミー賞助演女優賞ノミネートを得て話題となった「バベル」も、実はそんなライター泣かせの作品だ。

 監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと脚本家ギジェルモ・アルアガのコンビ(「アモーレス・ペレス」「21グラム」)は、時間軸をずらしながら全く別の場所で起きる出来事を巧みに結びつけて、深みのある人間ドラマを描く名手。監督はメキシコ人で、あのブラット・ピットやガエル・ガルシア・ベルナルに日本人役者までも参加とは、いったい何語の作品なのか?  舞台は何処? そんなまっさらな状態で映画館に足を運ぶと、彼らのストーリーテリングの妙を最大限に味わうことができる。

 とはいえ、本を買う時でも裏表紙のあらすじくらいは読んでから買うという人も多いだろう。多少パズルのピースを明かすと、物語の発端となるのはモロッコの山間の村で放たれた一発の銃弾だ。生活の糧であるヤギを襲うジャッカルを退治するためにと、父親は幼い兄弟に一挺のライフルを買い与える。悪ふざけで弾丸の飛ぶ距離を競う二人。そのうちの一発が観光バスに命中し、アメリカ人女性(ケイト・ブランシェットに瀕死(ひんし)の重傷をおわせる。彼女は夫(ブラット・ピット)と旅行中だった。

やがて物語はモロッコから日本、アメリカ、メキシコへと展開していく。一つの事件が及ぼす影響は個人の想像の範疇(はんちゅう)をはるかに超え、直接の当事者以外の人間にまで波及していく。この悲劇の連鎖の中で何よりも胸を締め付けられるのは、登場人物の誰もが善人でもなければ、決して悪人でもないということ。この世に起きる出来事は必ずしも善悪では割り切れないところに、人間の存在の難しさがある。

タイトルから推測すると、この作品は言葉の壁によるコミュニケーションのすれ違いを描いているのでは? と思う人も多いかも知れない。確かに本作品では4言語が入り乱れる。しかし、実際にコミュニケーションの障害となっているのは言葉だけではない。登場する夫婦、親子または兄弟は、同じ言語を話していながら分かり合えない。そんな彼らの間の壁を取り除き、また人が深い絶望、孤独に陥った時に救うものはいったい何なのか? イニャリトゥ監督の答えがここには描かれている。

2007年04月19日
バベル
近藤深雪
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